
PythonでCSVやログファイルを扱う際によく使われる open()
関数ですが、オプション引数のひとつ newline
はあまり意識されないことが多いかもしれません。
ですが、この newline
を正しく理解し、適切に指定することで、ファイルの読み書きにおける「改行のズレ」や「余分な空行」などの不具合を防ぐことができます。
この記事では open(~, newline="")
の newline
引数について、その指定方法、活用シーン・注意点までをわかりやすく解説します。
newline とは?
newline
は、テキストファイルを開くときに、改行コードの扱い方を制御するための引数です。
たとえば、UNIX系(macOS/Linux)では改行は \n
、Windowsでは \r\n
が使われています。
Pythonではこれらの差を吸収してくれる「ユニバーサル改行モード」が存在します。
newline
を使うことで、その変換動作を指定することができます。
指定できる値と動作の違いは以下の通りです:
newline=None
(デフォルト)- 読み込み時:
\r
,\n
,\r\n
をすべて\n
に統一 - 書き込み時:
"\n"
を 自動的にOSの標準改行コードに変換(Windowsなら\r\n
)
- 読み込み時:
newline=""
(空文字)- 読み書き時ともに 改行の変換なし。
- ファイル内の改行コードをそのまま扱う。
newline="\n"
/"\r\n"
/"\r"
- 書き込み時の改行コードを明示的に指定(読み込み時には変換なし)
具体例①:CSV書き込み時の空行問題と newline=""
Windows環境でCSVを書き出すとき、以下のように newline
を省略して書くと、行の間に余分な空行が入ることがあります。
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import csv # newline指定なし(NGパターン) with open("data.csv", "w") as f: writer = csv.writer(f) writer.writerow(["名前", "年齢"]) writer.writerow(["佐藤", "30"]) |
この原因は、PythonのCSVモジュールが内部で \r\n
を出力するため、さらに open()
の書き込み処理で \n
を \r\n
に変換してしまいます。
結果として \r\r\n
という二重改行になってしまうからです。
これを防ぐには、newline=""
を明示的に指定して変換を止める必要があります:
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# 正しい書き方 with open("data.csv", "w", newline="") as f: writer = csv.writer(f) writer.writerow(["名前", "年齢"]) writer.writerow(["佐藤", "30"]) |
このようにすることで、CSVモジュールの改行出力がそのまま使われ、正しい行構造が保たれます。
具体例②:読み込み時に改行コードを検出したいとき
あるファイルがどんな改行コードで保存されているか確認したい場合、自動変換されては意味がありません。
newline=""
を指定することで、元の改行文字をそのまま読み取ることができます。
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with open("sample.txt", "r", newline="") as f: for line in f: print(repr(line)) |
このようにすれば、'\n'
, '\r\n'
, '\r'
などの違いが repr()
の出力で明確に確認できます。
具体例③:任意の改行コードで統一したファイルを作る
たとえば、Windows環境でも常に \n
改行でログファイルを出力したい場合は、次のように書きます:
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with open("log.txt", "w", newline="\n") as f: f.write("1行目\n") f.write("2行目\n") |
こうすると OS に関係なく、ファイル内のすべての行が \n
で終わります。
newlineの使い分け方まとめ
newline
引数は指定方法によって挙動が変わるため、用途に応じて正しく選ぶことが大切です。
以下に代表的なケースごとの使い分けを整理します。
- 通常のテキスト処理やログ出力 →
newline=None
(特別な理由がなければこれでOK) - CSVやTSV →
newline=""
を必ず指定(特にWindowsで空行が入るのを防止) - 改行コードを揃えたいとき →
newline="\n"
などを明示指定 - 改行コードを検出したいとき → 読み込み時に
newline=""
このように、目的によって newline
の値を切り替えることで、余計な改行や環境依存の不具合を避けることができます。
注意点
ただし、便利な newline
にもいくつか注意点があります。
特に異なるOS間でファイルを扱うときや、バイナリモードを使う場合は気をつけましょう。
- バイナリモード(
"rb"
,"wb"
)ではnewline
は無視されます newline=None
は「見た目どおり」動くが、OSによって出力される改行コードが変わるので注意- ファイルを扱うOSが混在するプロジェクトでは、明示的に
newline=""
や"\n"
を使ったほうが安全
つまり、「特に指定しなくても動く」ケースもありますが、プロジェクトの性質によっては明示的に指定しておいた方がトラブルを防げます。
まとめ
今回は open(path, newline="")
の newline
引数について詳しく解説しました。
newline
はファイルの改行コード変換を制御するための引数None
(デフォルト)は自動変換、""
(空文字)は変換なし- 特に CSV やログなど構造が重要なファイルでは newline の指定が不可欠
- 曖昧さを排除したいなら、読み書きともに
newline
を明示するのがベスト
普段何気なく使っている open()
の中にある newline
引数は、実はファイルの整合性を守るために非常に重要なパラメータです。
データ処理やログ出力の品質を高めるためにも、しっかりと理解して活用できるようにしておきましょう。